CEOメッセージ

「新しい信頼をつくろう」 取締役 代表執行役社長 グループCEO 三毛 兼承 「新しい信頼をつくろう」 取締役 代表執行役社長 グループCEO 三毛 兼承

2019年4月、グループCEOに就任いたしました三毛です。

まず、新CEOとして、この統合報告書をご覧になる株主さま、個人のお客さま、法人のお取引先さまをはじめとする全てのステークホルダーの皆さまに、「MUFGは何のために存在するのか」「どういう姿をめざすのか」という點から始めたいと思います。

360年間変わらないもの

MUFGの源流の最も古いものは今から約360年前の両替店にまで遡ります。以來、長い歴史の中で世界恐慌、バブル崩壊、リーマンショックなど幾多の困難な時代を乗り越え、また、數々の統合も経験し、私たちは今日のMUFGに成長?進化してきました。

時代とともに、私たちの業務內容やご提供する商品は変化してきましたが、一つ変わらないものがあります。それは、「金融サービスを通じてお客さまと社會に貢獻する」という私たちの存在意義です。金融は今後とも“経済の血流”としての役割を果たし続けることになると考えています。

その役割を果たし社會に貢獻するために最も必要なものは、お客さまからの「信頼?信用」です。それこそが金融機関の価値の源泉であり、ビジネスの前提となるものです。

私たちには、長きに亙って先達たちが培ってきた正確な事務や安定的なシステムでお客さまの資産を確り守り続ける力、強靭な財務力を背景に安定して金融サービスを提供し続ける力があります。そして何より、社員に広く深くそうした使命感が浸透しています。

ありがたいことに多くのお客さまが、こうした點を評価してくださり、MUFGに「安心?安全」という価値を見出し、信頼を寄せられ、私どもの金融サービスを選んでくださっています。

「グローバルに信頼?信用され、イノベーションを象徴する存在」に

しかし、今、時代は大きく変わりつつあります。

グローバルな低成長の常態化や、世界中の中央銀行による金融緩和策、これによる低金利環境の継続、先進國から始まった高齢化の進展といった人口動態の変化、そして、貿易摩擦の背景にあるグローバルな覇権を巡る米中の爭いや自國第一主義の臺頭によって、永年に亙り築かれてきた世界経済の協調の枠組みさえも揺さぶられています。

さらに、SDGs(注1)やESG投資に見られる環境や社會的課題への関心の高まり、ミレニアル世代(注2)やジェネレーションZ(注3)と呼ばれる世代の新しい価値観や考え方など、社會環境やお客さまの行動様式は大きく変わりつつあります。

そして、デジタル?テクノロジーの進化は、こうした変化をさらに推し進めるだけでなく、同時にその変化のスピードを急速に速めています。例えば、McKinsey Global Institute(注4)によれば、5,000萬人のユーザーを獲得するまでにテレビは13年要しましたが、インターネットは3年、Twitterは僅か9カ月しか要していないのです。大きく、そして、急速に変わる人々の行動に合わせ、テクノロジーはさまざまな分野で従來と異なるビジネスを出現させています。それは金融界においても同様です。革新的なデジタル技術や新たなアイディアを武器に非金融業者が金融事業に參入し、斬新なサービスや利便性を今までとは異なる視點から提供し、拡大させています。

社會生活や経済活動を営む上で金融サービスは不可欠です。しかし、新時代における金融サービスとはどうあるべきか。私たちMUFGはどのような存在でありたいのか。社長就任にあたり、私はこのことを、もう一度自らに問いかけました。

私は、MUFGは、「グローバルに信頼?信用され、イノベーションを象徴する存在」でありたいと考えています。

いかなる厳しい環境にあっても安定して金融サービスを提供し続ける覚悟と強さ。安心して頼れるという信頼。そして、社會やお客さまのニーズが急速に変わっていく中で、新しいサービスや顧客體験を創造していくイノベーションの力。

これらを兼ね備えた存在こそ、社會が、そしてお客さまが求めているものだと考えます。

私たちMUFGはそうした存在になることをめざします。

  1. (注1) Sustainable Development Goalsの略、2015年に國連で採択された持続可能な開発目標
  2. (注2) 1980年代から1990年代半ば頃までに生まれた世代。若いうちよりインターネットが身近にあり、それ以前と価値観や消費行動が異なる世代
  3. (注3) 1990年代後半から2010年頃に生まれた世代のこと。幼少期からインターネットが當たり前のように存在する「デジタルネイティブ」な世代
  4. (注4) 米國シンクタンク

信頼?信用を「守る」という視座を超えて

変わりゆく環境の中で、私たちが持続的に成長を続けていくためには、どうすれば良いか?それが、現在の中期経営計畫(中計)のメインテーマでした。

「MUFGをもう一度、創造するところから始めるべきだ」

それが私たちの出した結論でした。そして、2017年にスタートさせたのが、「MUFG再創造イニシアティブ」です。「再創造イニシアティブ」は、デジタライゼーションなど「11の構造改革の柱」から成ります。今までの仕事のやり方を大きく変える要素を數多く含んでいる計畫です。

私が銀行の頭取に就任したのは、「再創造イニシアティブ」の具體化フェーズに入った2017年の6月というタイミングでした。経営陣の環境認識や危機感を社員と共有しなければ構造改革はうまくいかない、と考えた私は、各地で約5,000人の社員と対話を重ねてきました。そこで実感したのは、日々お客さまと接し、社會の中で生活する社員たちも強い危機感を持っていたということです。しかし、同時に將來に対する不安の聲もありました。自分たちの日々の行動の指針、迷ったときの道標が欲しい、と。

私は今回の社長就任にあたり、こうした聲に応え、「新しい信頼をつくろう」をグループ內での合言葉にすることとしました。「信頼?信用」は金融にとっては不変の価値です。しかしそれを「守る」という意識が強くなり過ぎると、挑戦する意欲を阻害します。変化の時代だからこそ、供給者の論理ではなくお客さまのニーズに即した商品?サービスをご提供する、デジタル技術も活用したお客さまとの新しい接點を作る。新しいことにチャレンジする。そうした新しい試みのいくつかがお客さまから評価され、お客さまからの「新しい信頼」となって戻ってくる。そうした會社をめざそうではないか。

社員が、永年に亙り培ってきた信頼を「守る」という視座を超え、未來に向けて新たな信頼を「築く」、そのために果敢に「挑戦」していこう、お客さまの真のニーズ?期待にお応えする商品?サービスを提供していこう、という思いを私はこの言葉に込めています。

プロフェッショナリズム、謙虛さ、リーダーシップ

自己紹介を兼ねて私のこれまでの経験について簡単にお話しします。

私は、米國のビジネススクールを経て30歳の時にロンドン支店に配屬となり、そこで約7年過ごしました。イタリア人、ギリシャ人、フランス人、アイルランド人、パキスタン人など実にさまざまな國の出身の上司や同僚とともに働く中で國際金融のイロハを徹底的に學びました。ダイバーシティとともに実感したのは、強烈なプロフェッショナル意識です。自らの職務にこだわり、クリエイティブに仕事をする力、コミュニケーション力に秀で、高いプライドを持って仕事に向かうプロフェッショナルたちの姿でした。

その後、日本で6年ほど法人営業等を擔當したのち、2000年からはニューヨーク支店で日系企業取引等を擔當しました。

そして2005年、経営統合によりMUFGが誕生することになりました。私に與えられた役割は、舊東京三菱銀行と舊UFJ銀行のシステム統合プロジェクトのリーダー。総コスト約2,600億円、11萬人月をかけた未曾有の大プロジェクトです。私にはITシステムの経験はありませんでしたが、プロジェクトマネージャーとしてチーム作りから始めました。システムが分かる人材、事務の専門家、國內のさまざまな業務に精通している人など、多くの社員にメンバーになってもらいました。リーダーを務めて痛感したのは、MUFGには実にさまざまな分野に多くのプロフェッショナルがいるという事実でした。また、経営トップの近くで働く中で、重要案件における経営者のコミットメントの大切さも學びました。

2011年からは、所管役員として銀行全體のシステム?事務を擔當することになりました。ピークで1日1億件もの事務を処理するシステムを1年365日24時間、障害を起こさせることなく稼働させ、安定して金融サービスを提供する、同時にシステムの高度化と一段の効率化にも取り組む。こうしたチャレンジングな職務に強いコミットメントを持つプロフェッショナルたちとの仕事を通じ、私は改めて金融におけるIT、そして、事務の大切さを実感しました。また、あるグローバルIT企業のアドバイザリー?ボードに招かれ(日本人は私一人でしたが)、そこで同じくメンバーとなっている世界のトップ企業のCIOたちと交流したことは、ITにおける世界の潮流について知見を深める貴重な機會となりました。

2013年からは、タイのアユタヤ銀行の買収プロジェクトに攜わりました。案件途中から參加し、買収交渉をまとめることが私のミッションでした。交渉にあたって重視したのは、アユタヤ銀行が一番大切にしている価値観は何か、ということ。どうすればお互いのバリューを上げられるかを彼らと一緒に考えていくなかで、自ずと交渉は妥結に向けて加速していきました。バンカーには謙虛さが重要です。揺るぎない自信を持つと同時に謙虛であること。それがとても大切だと私は考えています。

2015年には、米州本部長として再びニューヨークに渡り、米國人の新任CEOとともに、約1萬人の現地社員を抱えるMUFGユニオンバンクの共同経営に當たりました。ここで目の當たりにしたのは、米國流のスピードとダイナミックな決斷、そして米國ビジネスに精通した人物がリーダーシップを発揮することの重要性でした。競爭の激しい米國では、市場の動きに対する感性を持ち、戦略を一貫性をもってやりきることが何よりも大切です。現地ビジネスのプロフェッショナルによるマネジメントの重要性を再確認することができた貴重な経験でした。

中期経営計畫の進捗と課題

社長就任にあたっての私の所信表明はこのくらいにして、MUFGの現狀について、現行中計の進捗狀況と課題という形でご説明します。

まず、中計初年度であった2018年度の振り返りからです。

2018年度の振り返り

中計では、初年度に屈み、2年目に反転し、3年目に飛躍するという姿を想定していましたが、2018年度は當初想定していた以上に厳しい経営環境の中、覚悟はしていたものの、まさに「屈む」1年となりました。三菱UFJニコスのシステム統合計畫見直しに伴う減損損失計上もあり、昨年11月の中間決算公表時に引き上げた業績目標に対し、未達となったことは、誠に遺憾と考えています。

一方で、ビジネスモデルの変革?再創造は、一部に課題があったものの、概ね順調に進捗しました。

まず、「グループ一體型の経営」に向けた態勢整備が進みました。銀信の法人貸出等業務統合、機能別再編により、RM(注5)-PO(注6)の銀信?銀証一體運営が定著。グループ連攜件數が飛躍的に増加するなど、確かな手応えを感じています。

デジタライゼーション戦略では、米國Akamai社と共同で「Global Open Network」を設立しました。新型ブロックチェーン技術(注7)を基盤とし、外部ユーザーも想定したオープンなペイメントネットワーク(注8)の提供をめざすという壯大なプロジェクトです。

チャネル?BPR(注9)戦略では、機能特化型店舗の展開に加え、稅公金等のセルフ端末(STM(注10))の拡充やテレビ窓口(LINKS(注11))を全店に設置。同時に、スマートフォンアプリの機能を拡充させて、お客さまの利便性向上を図っています。

海外に目を転じると、日系企業セクターを中心に、外貨の資金利益が好転しました。タイのアユタヤ銀行が順調に業績を伸ばしているほか、「MUFGインベスターサービス」ブランドの下で海外での資産管理ビジネス収益が拡大しています。

グローバルCIBは、低採算アセットを約8,000億円削減した一方、今年3月、獨DVB Bankとの間で、7,000億円強の高採算アセットを有する航空機ファイナンス関連事業の譲受で合意しました。航空機ファイナンスを、既に世界的なプレゼンスを確立しているプロジェクトファイナンスや証券化に次ぐ第三の柱と位置付け、大きく育てていく方針です。

インオーガニック戦略(注12)においても大きな進展がありました。

今年4月には、インドネシアのバンクダナモンを連結子會社としました。これにより、7年前に著手したASEAN主要國における商業銀行事業プラットフォームが完成しました。今後はベストプラクティスの共有やシナジーの追求、內部管理の水準向上による、バリューアップのステージに入ります。

また、豪州のアセットマネジメント會社Colonial First State Global Asset Management(CFSGAM)の買収に合意し、今夏には買収手続きを完了する予定です。

同時に戦略出資の最適化も進め、昨年度のCIMBに続き、Standard Life Aberdeen(SLA)、ブラデスコ銀行、大新Financial Holdingsについても保有株式の全部ないしは一部を売卻しました。

そうした施策効果もあり、2018年度は二つの指標で、4年ぶりに前年度を上回る計數上の成果が見られました。一つは、銀行業の本業である資金利益の下げ止まり、もう一つは、顧客部門(注13)営業純益の増益です。

資金利益、顧客部門営業純益
  1. (注5) Relationship Managerの略、営業擔當者
  2. (注6) Product Officeの略、商品やサービスの企畫?開発?提供を擔う部署および擔當者
  3. (注7) MUFG とAkamai が共同開発した、毎秒100 萬件超の取引処理が可能な技術
  4. (注8) クレジットカード會社などの事業者と店舗やECサイトを結ぶ決済ネットワークのこと
  5. (注9) ビジネス?プロセスの抜本的見直し
  6. (注10) Store Teller Machine。「稅金」「公共料金」「依頼書によるお振り込み」の受付機能を備えた三菱UFJ銀行のATM
  7. (注11) Low-counter Interaction on Knowledge Station。テレビ電話を介して各センターに接続し、「相続」「住宅ローン」等の業務を受け付ける三菱UFJ銀行の端末
  8. (注12) 他社との提攜や他社の買収などを通じて事業規模拡大や収益向上を図る戦略
  9. (注13) お客さまを擔當するR&C, JCIB, GCIB, GCB, 受財の5事業本部

2019年度 ~「反転」への手応えを、確かなものに

中計2年目の2019年度は、このモメンタムを活かし、「反転」の年にしたいと考えています。

一方で、2018年度に計畫どおり進捗しなかった一部のビジネスについては、その戦略を一部見直す方針です。

まず機関投資家ビジネス。特にセールス&トレーディング業務は、株式相場の停滯に加え、海外クレジット懸念等の市場環境に関する不透明感があり、戦略の再考は不可避と考えています。一部業務をスリム化する一方、MUFGが従來強みを有している為替やレポ等に経営資源を投入するとともに、事業本部間の協働を進めます。

同様に、ウェルスマネジメントビジネス。この領域については、私たちがめざしている方向は正しいと考えていますが、資産運用ビジネスを中心に苦戦しており、運用商品販売型から資産管理型?アドバイザリー型モデルへの転換に向けて、プラットフォームの整備が必要です。資産承継などを切り口とした運用?相続?不動産などの幅広いニーズに対して、最適な組み合わせのソリューションを提供できるシニアウェルスアドバイザー(注14)の増員?育成や、銀行から証券への人材シフトを進めるほか、商品選定のゲートキーパー機能(注15)や高度なデジタルサポートインフラの導入など、事業基盤の構築を著実に進めていきます。

コストコントロールも一段と強化します。銀行の國內店舗數について、従來は2023年度までに20%削減としていましたが、これを35%削減に上積みします。加えて、店頭事務やミドル?バックオフィスの業務見直し等により、當初9,500人相當としていた業務量の削減を1萬人超相當まで積み上げるめどが立ってきました。將來的には本部人員を大幅に削減するなど、経費構造の全面的な見直しに著手しています。

今年度の「反転」から2020年度の「飛躍」を展望するに當たり、楽しみな動きや成果も芽生えつつあります。

まずR&C。マーケット環境に左右されにくいストック型ビジネスへの転換と、抜本的なコスト構造改革により、強い財務基盤への取り組みが進んでいます。資産運用ビジネスでは、人員を數百人規模で銀行から証券に再配置することにより、紹介型仲介業務の飛躍的拡大をめざします。同様に、不動産ビジネスでも大膽な人員再配置により態勢を強化します。コスト面では、銀行の全ての支店?支社併設拠點(注16)を、計畫より1年半前倒しで、一體運営拠點(注17)へ移行しました。要員や店舗?ATMネットワークの適正化を通じて、中計を上回るコスト削減に取り組みます。

JCIBは、引き続き外貨バランスシートや利ざやの改善に取り組むとともに、トランザクションバンキングの機能向上や資産回転型ビジネス(注18)のさらなる展開にチャレンジします。不動産はCRE(注19)提案、証券代行は株主戦略サポート、年金は財務戦略の切り口で活動を強化すべく、PO人材を増員し、體制を整備しました。政策保有株式の削減については、今年度中には合意取得ベースで中計目標を前倒し達成すべく対応を加速します。また、今年7月には「リサーチ&アドバイザリーユニット」を新設し、グループ內に分散していた機能を集約することで、より高品質な情報?アドバイザリーをシームレスに提供できる體制をめざします。

GCIBでは、Balance Sheet Optimization、すなわち貸出ポートフォリオの入れ替えで目に見える成果が出てきました。RORA(注20)がハードルを満たさない取引に対するモニタリングを強化し、低採算先の削減、取引採算の改善を進めています。また、低採算アセットを売卻する一方、先ほども觸れた航空機ファイナンスや米國でのサプライチェーンファイナンス事業の買収により、高採算アセットを積み上げる計畫です。

GCBは、MUFGユニオンバンクが減収減益となる見込みですが、コンシューマービジネスが牽引するアユタヤ銀行に加え、バンクダナモンの連結化により、全體としては順調に成長しています。ASEANのパートナーバンクの店舗數は今や3,000カ店を超えています。この圧倒的な現地のフランチャイズとMUFGのグローバルなネットワークを活かして、各國に進出するグローバルな完成品メーカーのみならず、サプライヤーからディーラーといった現地の中堅中小企業や購入者?従業員などの個人取引まで、全商流をカバーできる態勢を構築し、ビジネスの拡大に努めていきます。

受託財産は、CFSGAM買収に伴う費用やSLA売卻による同社からの配當剝落等の一時的な要因で減益となる見通しですが、それらを除いた実質では増益を見込んでいます。AM(注21)事業では資産運用殘高でグローバルトップ15位をめざし、CFSGAMのPMI(注22)に力を注ぎます。IS(注23)事業ではオルタナティブファンドの資産管理殘高でグローバルトップ5位の実現に向け、ファンド管理に付隨するバンキングサービスを拡充します。また、內部管理の高度化やコストコントロールに引き続き取り組み、より堅確な態勢での成長を実現します。

市場は、顧客ビジネスにおける採算管理を強化しつつ業務の効率化に取り組むとともに、MUFGが得意とする領域と成長領域、具體的には、機関投資家向けの為替や資産運用ビジネスなどに経営資源を振り向けます。トレジャリー(注24)では、米國の金融政策の変化などの環境変化を的確に捉え、債券?株式等のアセットアロケーションの見直しや機動的なヘッジ操作により、収益の拡大をめざします。

  1. (注14) 資産運用や相続などさまざまなニーズをお持ちのお客さまに対応するプロフェッショナル
  2. (注15) 高度なリサーチ?投資戦略に裏づけされた高品質な商品を取り揃える機能
  3. (注16) 個人などを擔當する支店と、法人などを擔當する支社が併設されている拠點
  4. (注17) 支店と支社の區別なく、一體運営している拠點
  5. (注18) オリジネーションとディストリビューション雙方の観點から、リスクアセット費消を最低限に留め、資産効率の向上を図るビジネス
  6. (注19) Corporate Real Estateの略
  7. (注20) Return on Risk-Weighted Assetsの略。金融機関が取っているリスクに対して収益をどれだけ上げているのかを示す指標
  8. (注21) Asset Managementの略
  9. (注22) Post Merger Integrationの略。買収後の経営統合プロセス
  10. (注23) Investor Servicesの略。投資信託にかかる基準価額算出、各種報告書の作成等のファンド管理やお客さまの保有する有価証券の管理(保管?決済?セキュリティーズレンディング)などのサービスの総稱
  11. (注24) 貸出などの資産と預金などの負債に內在する資金流動性リスクや金利リスクなどを総合的に管理するALM運営やグローバル投資など

コンプライアンス?內部管理の高度化

こうした営業戦略やビジネス展開を支える內部管理態勢のさらなる高度化も大きな課題です。とりわけ、グローバルに金融犯罪対策への関心が高まり、その高度化が米國をはじめとする各國當局から求められています。

これらに対応するため、2017年11月にマネー?ローンダリング防止、経済制裁対応および贈収賄?汚職防止をグローバルに統括する「グローバル金融犯罪対策部」をニューヨークに設置しました。経験豊富な金融犯罪の専門家チームが、グローバルに業務を監督しています。今後50カ國にある各拠點で世界共通のスタンダードに基づいた態勢整備を実行していきます。

國內では、今年予定されているFATF第4次対日審査(注25)への対応が重要です。この6月には、KYC(注26)高度化に向けて新たな手続?システムをリリースしました。日本の金融システムの一翼を擔う立場から確りと対応します。

近年、殘念ながら相場操縦など、コンプライアンスに係る事案が発生しました。この事実を真摯に反省し、重要な課題として、グループベースでコンプライアンスへの取り組みを強化していきます。

  1. (注25) Financial Action Task Force(金融活動作業部會)による、マネー?ローンダリング及びテロ資金供與対策に関する対日審査
  2. (注26) Know Your Customerの略。お客さまの本人確認や実態把握を目的として行う業務や手続

ESG課題の解決を金融ビジネスで

最近の大きな変化の一つは、持続可能な社會の実現に向けた人々の関心の高まりです。持続可能な社會の実現をめざそうとするSDGsが広く受け入れられ、環境(E)?社會(S)への取り組みをビジネスモデルに組み込み、それらを統括するガバナンス機能(G)が優れた企業への投資を行うESG投資が資産運用のメインストリームになりつつあります。

こうしたなか、私たちは中計においてSDGsを踏まえる形でMUFGが優先的に取り組むべき7つの環境?社會課題を特定し、それぞれの課題を金融ビジネスで解決する取り組みを開始しました。

その一つの例がサステナブルファイナンスへの積極的な取り組みです。MUFGでは今般、「2030年度までに累計20兆円(內、環境分野で8兆円)のサステナブルファイナンス実施をめざす」という數値目標を設定しました。この目標に向けて、再生可能エネルギー事業向け融資、グリーンボンドの引受?販売、スタートアップ企業の育成や地方創生に資する事業へのファイナンス等に積極的に取り組んでまいります。

また、「MUFG環境?社會ポリシーフレームワーク」(注27)を改定し、7月から適用を開始しました。今後、MUFGは新設の石炭火力発電所へのファイナンスは原則として実行しません。また、森林?パーム油?鉱業(石炭)の3セクターを新たに「ファイナンスに際して特に留意する事業」に追加するとともに、アセットマネジメント事業においても「MUFG AM 責任投資ポリシー」(注28)を定めて対応を進めていきます。

さらに、MUFGは気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同を表明しており、今回の統合報告書において炭素関連資産の計數を開示しました。気候関連のリスクが與信ポートフォリオに及ぼす影響を把握するためのシナリオ分析にも著手しています。

  1. (注27) 詳細は「方針/ガイドライン / MUFG環境?社會ポリシーフレームワーク」をご覧ください
  2. (注28) 詳細は「方針/ガイドライン / MUFG AM 責任投資ポリシー」をご覧ください

「ガバナンス改革」に終わりなし

昨今、マスコミ等で企業や団體の不祥事が報道される際に、その原因として、「ガバナンスの機能不全」が話題になるケースが増えています。

MUFGは、グループ発足以來、長い時間をかけてガバナンスの高度化に努めてきました。指名委員會等設置會社への移行などの體制面の整備を行い、當初4名だった社外取締役を徐々に増やし、今では過半を占めるようになりました。獨立社外取締役9名のうち、3名は女性、2名は外國人にお願いするなど、取締役の多様化も進めています。取締役會傘下の全ての委員會で、社外取締役が委員長を務めており、私のCEO就任も7回の指名?ガバナンス委員會で議論を重ねたうえで、決定されました。

私は、ガバナンスは形ではなく、中身だと考えています。そのためにも、事業展開に応じた見直しも必要です。MUFGのように、グローバルに展開し、多くの子會社?関連會社を持つ企業體においては、例えば、子會社等を含めた包括的なガバナンスに高度化の余地があると考えています。

「ガバナンス改革」に終わりはありません。常に謙虛に自らを評価し、引き続き、実効性の向上に努めてまいります。

デジタライゼーションと人材開発

私は、構造改革を進める上での最大の課題の一つが、社員のエンパワーメントだと考えています。

デジタル技術を活用した効率化で今後5年間に約1萬人分相當の業務量が削減される見通しですが、自然減による人員減は6,000人余りと想定しています。すなわち、社員に求められるスキルは大きく変わってきます。これを充足し、社員たちにこれまで以上にやりがいのある仕事の機會を提供することは、経営上の大きなテーマです。社員個々人に、それまでの経験を踏まえた將來のキャリアパスを示すとともに、新しいスキルを習得するための研修も用意し、より働きがいのある仕事にチャレンジするよう、自発的な行動を促す仕組みを整えていく方針です。

これに加え、デジタルトランスフォーメーションを推進する擔い手となる人材の育成?採用を進め、全社員のデジタルリテラシーを高めるための育成プログラムも開始します。

業務がグローバル化?多様化するなかで、將來の経営人材をどのように育成していくかも課題です。MUFGの將來はこれらの人的財産にかかっているといっても過言でありません。そのため、昨年「MUFG University」を開設しました。ここでは、執行役員などの上級マネジメントが日本採用?海外採用を問わず一堂に會し、グローバル経営に必要な視座と実踐力の獲得をめざして學んでいます。例えば、スイスのIMD(International Institute for Management Development)と連攜したグローバルリーダーシップを養成するプログラムを実施するなど、すでに受講生は200名を超えました。

イノベーションは多様化から生まれます。私は自分の経験からそのことを肌身で実感しており、女性や外國人などがその能力を存分に発揮できる會社をめざしたいと考えています。日本國內では、女性の役付者比率を2020年度末までに24%とする目標を掲げています。さらに、この中から経営を擔う人材を育成するため、集合研修や役員によるメンター制度などを実施しています。

株主還元の考え方

最後になりましたが、株主還元に関する私の考えをお話ししたいと思います。

私は、株主の皆さまへの利益還元を重要な経営課題と位置付けています。

昨年5月に公表した「株主還元の基本方針」は社長交代後も不変です。詳しくは、この後のCFOメッセージに譲りますが、私としては、MUFGの本業の収益力を表す業務純益を底打ち?反転させ、配當性向40%をなるべく早期に実現することで、株主の皆さまの期待に応えたいと考えています。

また、今後もタイトな資本運営を心がけ、「利益の上積み」や「RWA(注29)費消の一段の抑制」等により余剰資本があると判斷できる場合には、機動的に自己株式取得を検討します。

  1. (注29) Risk Weighted Assetの略。銀行の健全性を維持するために導入された自己資本比率を計算する際に分母となる値

終わりに

日本の金融は、難しい局面にあります。しかし、これまでお客さまからいただいてきた信頼や信用に甘んじることなく、時代の変化に積極的に挑戦していくことができれば、私たちにはまだまだ大きなポテンシャルがあるはずです。

MUFGには約3,400萬人の個人のお客さま、約130萬社の法人のお客さまがおられます。私たちを信頼し、貴重な情報を提供し、口座を開設してくださっているのです。他業種から金融に參入してくる會社にしてみれば、これは垂涎の的に違いありません。

しかも今は、テクノロジーの進化がある。私たちがマーケティングの手法を変え、そして、私たちのビジネスモデルを再定義することができれば、過去からずっと引き継いできた巨大な顧客基盤が、もっともっと大きな価値を生んでいくということです。

そしてMUFGには、世界に20萬人近い社員がいます。こうした人材の力をもっともっとうまく活用することができれば、MUFGは変わる。

よく社員に伝えてきた言葉に、アフリカの諺があります。

「速く行きたければ一人で行けばいい。遠くへ行きたければ、みんなで行けばいい」

遠くに行くためにこそリーダーは必要です。そして、どれだけメンバーを鼓舞し、その潛在能力を引き出せるかで、行ける距離は決まる。私はそう考えています。

MUFGが100年後も必要な存在であるために。

「MUFG再創造イニシアティブ」という大きなプロジェクトを完遂し、「グローバルに信頼?信用され、イノベーションを象徴する存在」をめざしてまいります。

今後とも皆さまのご理解と一層のご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

2019年7月
取締役
代表執行役社長 グループCEO

三毛 兼承